東京モーターショー、グッドイヤーのブースは東6ホール、横浜ゴムとダンロップの横にある。今回は、アジア・パシフィック地区製品開発担当副社長、デビッド・ザンジグ氏と消費財担当副社長ライオネル・ラミレス氏が来日、Webモーターマガジンでは単独でのインタビューを行った。
画像: 東京モーターショー、グッドイヤーブース。東6ホールにある。

東京モーターショー、グッドイヤーブース。東6ホールにある。

製品とともにコンセプトタイヤも展示

今回は、オールシーズンタイヤである「ベクター4シーズンズハイブリッド」や今シーズンに新しくなった「アイスナビ7」などの市販のタイヤとともに、今までに世界各地のモーターショーで展示したコンセプトタイヤも展示していた。

画像: 左は磁気浮揚する球形タイヤ Eagle 360(イーグル サンロクマル)、右は熱電素子と圧電素子による「発電タイヤ」 BH-03(ビーエイチ・ゼロスリー)。

左は磁気浮揚する球形タイヤ Eagle 360(イーグル サンロクマル)、右は熱電素子と圧電素子による「発電タイヤ」 BH-03(ビーエイチ・ゼロスリー)。

画像: 右が路面状況をモニタリングしタイヤが自在に変形する「モーフィングタイヤ」 、 Triple Tube(トリプル・チューブ)

右が路面状況をモニタリングしタイヤが自在に変形する「モーフィングタイヤ」 、 Triple Tube(トリプル・チューブ)

インタビュー:グッドイヤーが見据える「未来のタイヤ」とは

今回、東京モーターショーのために来日した、グッドイヤー アジア・パシフィック地区製品開発担当副社長、デビッド・ザンジグ氏に話を聞いた。インタビューアーはWebモ・タイヤ担当のネギシです。

画像: グッドイヤー アジア・パシフィック地区製品開発担当副社長、デビッド・ザンジグ氏。

グッドイヤー アジア・パシフィック地区製品開発担当副社長、デビッド・ザンジグ氏。

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ネギシ(以下ネ)よろしくお願いします。今回、東京モーターショーの自動車メーカーのブースをご覧になったと思いますが、なにか気になったクルマはありましたか?
ザンジグ氏(以下ザ)いろいろ見ましたが、トヨタの「コンセプト愛i」ですね。気に入りました。グッドイヤーのコンセプトタイヤを履いていますし(笑)。

画像: トヨタ・コンセプト愛i。

トヨタ・コンセプト愛i。

EVと自動運転、タイヤメーカーとしてどう対応する?

ネ)今回、東京モーターショー会場を回っていると、どの自動車メーカーもEVと自動運転、というのが中心のイメージがあります。タイヤというのはそれにも対応していかなければいけないと思います。今後グッドイヤーとしてどう考えていますか?
ザ)EVというのは、もちろん世界的なトレンドなんですが、とくにこのアジアパシフィックでは重要になっていくと思います。

4つの要素があると思っています。ひとつは「低転がり抵抗」。この改善がもっと必要になっていきます。ふたつめが「ノイズ」。EVはエンジン音がなく静かなので、静粛性の高いタイヤを目指します。3つめが「タイヤのロードインデックス」。EVはバッテリーが重いため、その荷重をしっかりと支えるタイヤが必要になります。最後は「摩耗」です。EVはトルクがあるため、そのトルクを路面に伝えることが重要です。EVは加速がダイレクトです。そのタイヤが受ける大トルクに対する摩耗を考え、改善していくことが大事だと思っています。

それからEVは都市部以外ではインフラが整備されてない。それに対して、グッドイヤーでは「発電タイヤ」というコンセプトタイヤも提案しています。

自動運転、のことですが、タイヤは路面に接している唯一の部品です。センサー技術を使い、車体とインタラクトする(相互作用する)ということを考えています。イーグル360アーバンという球体のコンセプトタイヤにはAIが搭載されていて、車体とクラウドで繋がり、環境の変化、天候などを検知、より人間の運転を助ける・・・ということも考えているんです。

画像: Goodyear Eagle 360 Urban www.youtube.com

Goodyear Eagle 360 Urban

www.youtube.com

日本のタイヤ市場の要求は、他の地域と違う?

ネ)グッドイヤーはグローバル企業ですが、日本という市場はタイヤ性能への要求はほかの地域と違いますか?
ザ)いくつか特徴がありますね。ひとつには、ノイズ(騒音)に対する要求が大きいこと。タイヤのなかにスポンジを入れるという技術もグッドイヤーは持っていて、その要求に答えています。
ネ)それは住友ゴムさんの技術ではなくて?
ザ)そうです。オリジナルの技術です。すでにメルセデス・ベンツのOEMだったり、新型アウディA8用OEタイヤにも搭載されています。
ネ)すみません、知りませんでした。
ザ)住友ゴムさんだけでなく、グッドイヤー独自のパテントも持っているんです。

あとは冬タイヤですね。日本はハッキリと四季があるのが他市場との違いかもしれません。過酷な冬道にはスタッドレスタイヤが有効ですが、そうでない地域、東京、大阪などではオールシーズンタイヤも良いのではないでしょうか。
ネ)ボクも半年間、グッドイヤーのベクター4シーズンズを履いていましたが、夏も冬も、そこそこ、というか都会に住んでいればまず満足のいく商品でした。
ザ)じつは我々グッドイヤーがオールシーズンタイヤの発明者なんです。日本ではまだあまり知られていませんが、地域によってはスタッドレスタイヤではなく、このタイヤが受け入れられる土壌があるだろう、と。認知が広がれば、もっと多くのお客様に使ってもらえるだろうと考えています。これはもう少しマーケティングを考えないといけませんね。

同席した日本グッドイヤー取締役 営業本部長 吉沢雄一氏)
ひとこと加えさせていただきますと、ベクター4シーズンズの販売は昨年比で非常に勢いで伸びてますが、全体の需要からすると一部なので、我々としてはもっと伸ばしていける、と。

画像: 日本グッドイヤー取締役 営業本部長の吉沢雄一氏。

日本グッドイヤー取締役 営業本部長の吉沢雄一氏。

タイヤ安定供給のための施策はある?

ネ)話は変わります。今年になって天然ゴムや合成ゴムの価格が急騰したりして大変だと思いますが、タイヤを安定的に供給するためにグッドイヤーとしてどういうことをお考えですか?
ザ)グッドイヤーはタイヤだけでなく、総合的なゴム製品の会社です。そういったことでゴムの研究開発には多くの投資をしています。天然ゴム/合成ゴムの間で市場の変化によってどのような柔軟性を持たせた方がいいか、そういう研究も行っています。合成ポリマーの研究も。
ネ)そういえばこの前、グッドイヤーがアメリカの大豆の団体と提携したというニュースを目にしましたが、大豆油を使うとなにか良いことがあるんですか?
ザ)材料関係、オイル関係も我々研究を行っていますが、現在、石油に多く依存しているので、ほかの天然素材を使えるか、たとえば野菜油、植物油、も試しています。今回、アメリカの振興団体の要請で「大豆も使えないか」ということで研究も行いました。食べ物をムダにする、ということではなく、大豆から摘出した油を使う、ということですね。使ってみると非常に柔軟性が高く、結果としては良好でした。
同席した日本グッドイヤー技術本部長、松崎洋明氏)
タイヤのゴムって、ある温度以下になると、プラスチックのようになって割れてしまうんですね。これをガラス転移点と呼ぶんですが、大豆油を使うことでその温度が下がるんです。なので今までより硬化しにくくなる・・・ということで、ウインタータイヤ/オールシーズンタイヤなどで使えるのではないか、ということです。
ザ)北米ですでに導入したんですが、「ウェザーレディ(WeatherReady)」というブランド名で雪の時でもパフォーマンスが変わらないといったタイヤを販売しています。これは大豆油のおかげで可能になりました。

10年後、現実的にタイヤはどうなっている?

ネ)最後にお尋ねしますが、10年後のタイヤというのはどうなっているのか? たとえば黒いタイヤが「白く」なったり、たとえばドライもウエットも、スノーもアイスも、全部1本で効くタイヤができる・・・ということも考えられます。タイヤはクルマに着くものなので、もちろんクルマの方向性によってタイヤの進化の方向も変わるとは思うんですが、理想とする「10年後のタイヤ」はどうなるのか。非現実的なことではなく、どう考えているのか? 教えてください。

ザ)道路に接地するパーツ、ということに関しては、10年後も変わっていないでしょう。グッドイヤーの社内には、「アドバンスドコンセプトグループ」といって、将来を見据えるグループがあります。確かにその中ではいろんな色のチョイスも考えているんですが、いまのところやっぱり「黒」が一番好まれているので、それは変わらないんじゃないでしょうか。

イーグル360アーバン、これは今までのタイヤと違い球体です。ずっと今まではタイヤのカタチは変わらなかったのですが、「カタチが変わる」ということも可能性としてはあるのではないかとも考えているんです。

いろいろな製造工程というものも研究しています。カタチを変える、ということは製造工程も変える、ということなんですが、この球体タイヤは3Dプリンターも使いながら、これまでの製造工程を駆使できるので、可能性としては探っているところです。

ネ)球体タイヤは、現実離れしている気がしますが・・・。「10年後は、まだ、ないかな?」と。
ザ)この球体タイヤ、まだその「時間軸」というものは決まっていません。これを実現するにはもちろん自動車メーカーとのインタラクション(相互作用)も必要になってきますし、磁石を使うのでいろいろな課題を乗り越えなければなりません。

ですが、球体タイヤにすると良いところがあり、それは「動き」「運転性」「操作性」が上げられます。全方向にすぐに移動できる、横にも移動できます。たとえばすぐに駐車できるというメリットもあります。

画像: グッドイヤーの「革新の歴史」。プレスブリーフィングでのプレゼンテーション資料。

グッドイヤーの「革新の歴史」。プレスブリーフィングでのプレゼンテーション資料。

なぜ「コンセプトタイヤ」が大事なのか? まず「革新」のために必要だということが挙げられます。我々グッドイヤーは100年間の革新の歴史、というものを持っている。我々の中のチームも、こうした革新的なものを将来的に大量生産に持っていく、という考えでやっています。「限界をさらに超える」という意味で、大切なんです。我々のタイヤは「月」にも行ってますし、革新は繋がっているんです。
ネ)貴重なお時間、ありがとうございました。

画像: 話を伺ったザンジグ氏(Mr.David Zanzig  右)と消費財担当副社長ライオネル・ラミレス氏(Mr. Lionel Ramirez 左)。後ろがシェアリング経済を見据えたAI搭載球形タイヤ Eagle 360 Urban(イーグル サンロクマル アーバン)。

話を伺ったザンジグ氏(Mr.David Zanzig 右)と消費財担当副社長ライオネル・ラミレス氏(Mr. Lionel Ramirez 左)。後ろがシェアリング経済を見据えたAI搭載球形タイヤ Eagle 360 Urban(イーグル サンロクマル アーバン)。

取材を終えて

クルマ好きであればあるほど、クルマを知っていれば知っているほど、グッドイヤーブースで展示されているバランスボールのような球体のコンセプトタイヤ「イーグル360アーバン」は、奇抜で現実味のないものに映るだろう。じつはボクもそうだった。

でも、グッドイヤーの製品開発担当副社長であるデビッド・ザンジグさんの話を聞いていると、それはけっして奇抜さを狙ったモノではなく、未来に向けてタイヤがどうあるべきかをきちんと考えた上でのコンセプトタイヤだということがわかった。

その後、ある日本人のタイヤ技術者と話をしたのだが、その技術者いわく「やっぱりアメリカ人って発想が凄いですよね。本気なんですよあれ。日本人って1から100にするのは上手いですが、ああいう『0から1』を発想するっていうこと、なかなかできないですよ」

10年前の東京モーターショー、タイヤメーカー各社から発表されたリリース、いまも自宅に残っている。その資料を見ると、当時は突拍子もない技術だと思っていたものが、今では当然のように商品に落とし込まれているものがある(じつは今では聞かなくなったものも・・・)。

タイヤもクルマも、技術の革新ってイマジネーションのチカラのような気もする。ザンジグさんの話を聞いてふとそう思った。

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